母から相続した遺産の中に、日頃使っていない一軒家があります。母は、この家を知人に貸していたようですが、私としては、建物が老朽化していることもあり、この建物を取り壊した上で、自分の家を建てようと思っています。この場合、この家の賃貸借契約を終了させることはできますか。

まず、賃貸借契約を終了させる前提としては、相続人が賃貸人であることが必要とされます。この点については、被相続人の死亡に伴って、「賃貸人としての地位」が相続人に移転します。これは、特別な手続を必要とせず、賃貸に出している不動産を相続することによって、当然に賃貸人になると考えられています。賃貸人としての地位については、相続登記をしなくても賃借人に主張することができるとされていますが、賃貸人が誰であるかを明確にして、その後の交渉を円滑に進めるという意味では、相続登記をしておいた方がよいと思います。
次に、建物の賃貸借契約を終了させる方法としては、更新の時期がちょうど来ていればその更新を拒絶する方法(借地借家法26条1項)と解約の申入れをする方法(同27条1項)があります。どちらの場合であっても「正当事由」がなければ、賃貸借契約を終了させることはできません(同28条)。
この「正当事由」については、〔1〕建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、〔2〕建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、〔3〕建物の明渡しと引き換えに支払う賃借人に対する財産上の給付(いわゆる立退料)を考慮して判断されますが、〔1〕の有無が最も重要であり、〔2〕と〔3〕は補助的な要素にすぎません。そのため、立退料を多く支払うからといって正当事由が認められるわけではないことに注意が必要です。
ご質問の場合は、賃貸人が建物を建て替える必要性がどれくらいあるのかについて具体的に検討し、賃借人側の都合や立退料の金額なども踏まえた上で判断されることになります。ただし、正当事由が認められる可能性はかなり低いため、当事者同士の話合いで解決することが必要であると思われます。

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