アパートの一室を貸しているのですが、賃借人から畳の傷みが激しいので賃貸人の負担で取り替えてほしいとの申し入れがありました。応じなければなりませんか。

経年劣化により、健康で快適な日常生活を害するほど畳が傷んでいるならば、特段の事情がない限り応じなければなりません。

賃貸人は、賃貸物件の居住のために必要な修繕をし、その費用を負担する「賃貸人の修繕義務」を負います(民法606条1項本文)。もっとも、賃借人のせいで修繕が必要になった場合は免除 されます(同項但し書き)。また、修繕義務は、   居住の用に耐えない、あるいは居住に著しい支障が生じるほどの激しい破損が対象です (最判昭和38年11月28日)。アパートで言えば、健康で快適な日常生活が送れないほどの破損が生じてはじめて、賃貸人が修繕費用を負担する可能性が生じます。ポイントは、賃貸物件の破損の程度は、物理的な側面のみならず、精神面・衛生面からも判断されることです。

アパートにおける畳は、賃貸物件の重要な備品です。賃借人は畳の上で座ってくつろぎ、布団を敷いて寝ますから、清潔で整った畳は、健康で快適な生活のため大切となります。畳に大きな穴が空いていなくとも傷みが激しければ、ダニやカビが繁殖し健康に害を及ぼしやすくなってしまいます。畳は日常的に賃借人に踏まれていますし、木製の床などよりも家具の重さでへこみやすいものです。長年アパートを貸していれば、いつかは賃借人が日常生活を送るには不適切なほど傷んでしまうでしょう。

よって通常ならば畳替えが必要とされても仕方がない時期に居住している賃借人からの要求に対して、賃貸人の負担で畳を取り替えなければならないことはありえます。  なお、賃借人からの要求を放置していると、賃借人が修繕した費用を請求される、さらには家賃が修繕費用と相殺されるおそれがあります(民法607条の2)。ご注意ください。

 

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