不動産の相続

1.不動産の相続に関する問題(総論)

(1)不動産の相続と管理行為

相続人が複数存在する場合は、相続財産は共有相続人の共有となります(民法898条)。ただし、相続開始から遺産分割が終了して、相続財産の帰属主体が確定するまでの間、遺産を事実上保有している相続人には管理義務が生じます。

相続人は、相続が開始してから相続放棄または限定承認までの間、自分が所有している固有財産と同じように、相続財産を管理すべき義務を負います(民法918条1項)。具体的には、家屋等の修繕、不動産の不法占有者に対する妨害排除請求、相続の登記などです。

この点について、管理行為を超えて相続財産の全部または一部を処分した場合は、単純承認をしたものとみなされるため、管理行為の範囲については特に注意が必要です(民法921条1項)。

(2)共同相続における債権債務関係

遺産財産の中に賃貸中の不動産がある場合、その賃料については、共同相続人の共有財産になると考えられています。これについて、裁判所は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定に取得するものと解するのが相当である」と判示しています(最判平成17年9月8日判タ1195号100頁)。

そのため、例えば遺産の中に月額10万円の賃料が発生する貸家があり、相続人は相続分が等しいAとBの場合、相続開始から遺産分割終了まで、AとBが月額5万円ずつ賃料を確定的に取得し、のちの遺産分割において、当該貸家をAが取得することになったとしても、Bは遺産分割終了までに取得した賃料をAに返す必要はありません。この場合、実際にはAがすべての賃料を受領している場合が多いと考えられますが、Bとしては、Aに対して不当利得返還請求を行うか、Aの同意のもと遺産分割手続の中で賃料の分配を行うことが考えられます。

また、その間に発生する土地建物の固定資産税、賃借料、電気料金、水道料金、火災保険料、下水道使用料、土地改良費、山林の植え込み・刈取りの費用などの管理費用については、同じように共同相続人が法定相続分に応じて負担することになります。

(3)遺産である不動産の評価

遺産財産を相続分に応じて分割するためには、それぞれの遺産を貨幣価値に換算する必要があります。このうち、不動産に関しては、当事者の合意に基づく評価または不動産鑑定士による鑑定を行うことになります。当事者の合意を形成する際の参考として、固定資産評価額、相続税評価額、公示価格、基準値評価額などの公表されている資料や、当該不動産についての家庭裁判所の指名した専門委員、参与員、家庭裁判所調査官による評価意見または不動産業者の査定額などが利用されています。

2.遺産に不動産が含まれる場合における遺産分割

(1)遺産分割の種類

当事者間で遺産分割の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所による審判を求めることになります。その際、審判における分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有関係の形成という種類があります。裁判所は、〔1〕相続開始前からの遺産の占有利用状況の保護、〔2〕生活困窮当事者における定期的収益物件取得の必要性、〔3〕遺産そのものの際有効利用の可能性、〔4〕形式的無効な遺言に現れた被相続人の意向などを総合的に考慮して決定しています。

(2)現物分割

現物分割は、遺産を各相続分に応じて分割する方法です。現金や預貯金などについては、特に問題がありません。これに対し、不動産の場合は、分割によって価値が下がったり、居住が不便になったりすることもあることから、あまり多く採用されていません。

なお、土地を分割する際に分筆を行う必要はありませんが、審判書に地積測量図を添付することが求められています。将来的に土地を処分する可能性があることや税金の関係からすると、分筆をしておいた方が望ましいといえます。

(3)代償分割

共同相続人の1人または数人に、他の相続人に対し債務を負担させて現物分割に代えることを代償分割といいます。代償分割は、〔1〕現物分割が不可能な場合、〔2〕現物分割をしたのでは経済的価値を大きく損なうために不適当な場合、〔3〕特定の遺産に対する特定の相続人の占有、利用状態を特に保護する必要がある場合、〔4〕相続人間で代償分割することを合意している場合に行われます。ただし、遺産が不動産である場合は、現物分割のデメリットが大きいため、実務的によく行われています。

代償金の支払時期は、調停または審判確定と同時に一括払いすることが望ましいといえます。実務上は、代償金の額や銀行融資の利用などを斟酌し、2~3か月程度の猶予を与えることもありますが、支払能力がない相続人の場合は、原則として代償分割をすることができないことに注意が必要です(大阪高決平成3年11月14日家月44巻7号77頁)。

(4)換価分割

当事者の合意に基づく売却、現物分割が困難な場合で、代償金の支払いによる分割もできないときに、遺産を換価してその代金を分配する方法がとられます。当事者全員の合意に基づき、売却価格、売却期限、経費の不安、売却担当者を取り決めして売却を進めます。

不動産の売却代金自体は、遺産そのものではないため、その分配方法について定めておく必要があることに注意が必要です。

(5)共有関係の形成

例外的に、遺産を分割しないまま共有とする方法もあります。これは、遺産が不動産の共有持分であるなど、現物分割、代償分割、換価分割のいずれの方法も採用できない場合に行われることがあります。ただし、共有関係は常に共有者との関係を考えなければならないことから、将来的な処分が困難になるおそれがあります。

なお、この共有関係は相続法における共有ではなく、物権法上の共有となるため、その解消には共有物分割請求が必要となります(民法258条1項)。

3.不動産を相続した場合における登記手続

(1)登記時における具体的な方法

不動産登記法では、不動産の権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則となっています(不登法60条)。しかし、相続の場合は、登記義務者である被相続人が存在しないため、登記権利者である相続人が単独で申請できることになっています(不登法63条2項)。

また、相続人が複数存在する場合、本来は相続人全員での申請が原則ですが、相続人全員を登記権利者として法定相続分による共有として表示する場合には、保存行為(民法252条但書)として、相続人の一人が単独で登記申請をすることができます。

遺産分割後に登記をする場合、遺産分割により不動産を取得した相続人は単独で登記申請することができるとされています(この場合の登記原因は「相続」となります)。

これに対し、法定相続分による共有登記をした後に遺産分割がなされた場合には、遺産分割により共有持分を取得するものとこれにより共有持分を失う他の相続人の共同申請が必要であるとされています(この場合の登記原因は「遺産分割」となります。)。

(2)「相続させる」旨の遺言と登記

「相続させる」という内容の遺言は、特段の事情のない限り遺産分割方法の指定であり、これと異なる遺産分割協議や審判はなしえないし、その権利承継の効果は遺言の効力発生と同時に生じると判示されています(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁)。

そのため、不動産が被相続人名義である場合には、登記実務上、遺言を原因証書として「相続させる」旨の遺言により相続した相続人が単独で登記申請をすることができるとされています。

(3)「数次相続」と登記

不動産の登記名義人の死亡により相続が開始したにもかかわらず、その旨の登記がなされないうちに、相続人についてさらに相続が生じた場合、実務上「数次相続」といいます。

この点について、中間相続が単独相続の場合であれば、中間の相続登記を省略して直接現在の所有者名義に登記することができるとされています。例えば、祖父が亡くなった際、相続人が母一人のみであった場合などを指します。

これに対し、中間の相続が共同相続の場合には、中間の相続について共同相続の相続登記をしたうえで、被相続人の共有持分について、さらに相続登記をすることになります。

(4)相続登記と第三者

共同相続人の一人が、遺産である不動産について事実とは異なる登記をしたうえでこれを第三者に処分した場合、他の相続人はその持分について登記をしなくても第三者に対抗することができます(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁)。

また、遺言によって法定相続分割合以下の指定をされた相続人が、遺産である不動産について法定相続分による相続登記をした上で、法定相続分による持分を第三者に譲渡することがあります(遺言によって3分の1の割合にされた配偶者が2分の1の相続登記をした場合など)。この場合、法定相続分割合以上の指定をされた相続人は、第三者に対して、登記がなくても法定相続分割合を超える部分を対抗することができます(最判平成5年7月19日家月46巻5号23頁)。

ただし、他の相続人が持っている共有持分の部分については、譲渡によって第三者が有効に取得したといえるため、第三者の登記の全部抹消を求めることはできず、自己の持分についての一部抹消登記請求ができるにとどまります(前掲最判昭和38年2月22日)。

(5)相続放棄と登記

共同相続人の1人が相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。この点について、相続放棄は相続人の利益を保護しようとするものであって、その効果は相続放棄時に遡り、かつその効果は絶対的であることから、相続放棄による権利取得は登記なくして第三者に対抗することができます(最判昭和42年1月20日民集21巻1号16頁)。相続放棄があった場合、他の相続人は相続放棄申述受理証明書を添付して、「相続」を登記原因とする被相続人からの移転登記手続をすることができます。

(6)遺産分割と登記

遺産分割の効力は相続開始時に遡るとされていますが(民法909条本文)、その効力は第三者の権利を害することができないとされています(同条但書)。そのため、遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は、登記を経なければその権利取得を第三者に対抗することができません(最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁)。

(7)遺贈と登記

遺贈の効果は、包括遺贈の場合は相続の場合と同様(民法990条)、相続開始と同時に権利移転の効果が生じるとされており、特定遺贈の場合でも特定物が対象となる場合は、相続開始と同時に権利移転の効果が生じるとする見解が多数説です(大判昭和13年2月23日民集17巻3号259頁)。

しかし、遺贈は、遺言によって行う財産の無償譲渡という性質を有するため、遺贈による権利取得を第三者に対抗するためには、登記を備えることが必要であると解されています(最判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁、最判昭和46年11月16日民集25巻8号1182頁)。この場合、登記原因は「遺贈」となり、受遺者を登記権利者、遺言執行者または相続人を登記義務者とする共同申請が必要となります。

(8)相続分の譲渡と登記

相続分の譲渡を受けた場合は、他の相続人との関係では対抗要件を具備しなくても主張することができます(東京高決昭和28年9月4日高民集6巻10号603頁)。しかし、第三者との関係では、相続分の譲渡による権利取得を主張するために登記が必要であると考えられます。そして、相続分の譲渡が相続人以外の者に対してなされた場合には、「相続」を原因として直接譲受人に相続登記することはできず、共同相続登記をしたうえで、「相続分の売買または贈与等」を登記原因とする持分移転登記をすることになります。

4.不動産を相続した場合における税金関係

(1)基礎控除額

相続税の計算方法は、現行法では法定相続分課税方式によります。課税資産の合計額が、基礎控除額5000万に相続人一人当たり1000万円を加算した金額以下であれば、相続税はかかりません。例えば、夫が亡くなって、相続人が妻、長男、長女の3人であれば、5000万+1000万×3=8000万円が基礎控除額になります。

なお、昨今の相続税法改正に伴い、平成27年1月1日以降に相続が開始した場合には、基礎控除額3000万円+相続人一人当たり600万円に変更されます。

(2)課税における不動産の評価

相続財産に不動産が含まれる場合の評価基準は、地目別に〔1〕路線価方式、〔2〕倍率方式、〔3〕宅地比準方式のいずれかによって評価します。宅地、借地権については、〔1〕または〔2〕、農地、山林、原野、牧場、池沼、雑種地については、〔2〕または〔3〕で評価されます。

〔1〕路線価方式

路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の評価方式であり、路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことです。路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状などに応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

〔2〕倍率方式

倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方式です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。家屋の場合は倍率方式が使われており、固定資産税評価額に一定倍率(現行は1.0倍)を乗じて計算します。

〔3〕宅地比準方式

宅地比準方式は、市街地農地、市街地周辺農地などの土地の評価方式です。その土地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額から1㎡当たりの宅地造成費相当額として定められた金額を控除して、土地の面積を掛けることによって計算します。

 

不動産のうち、賃貸されている土地や家屋の場合は、権利関係に応じて評価額が調整されることになっています。また、相続した宅地などが住宅や事業用として使われている場合には、限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。

(3)借地権の評価方法

借地権を相続した場合は、借地権の目的となっている土地が更地であるとした場合の評価額に借地権割合をかけて求めます。この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。

定期借地権の場合は、原則として、課税時期において借地人に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額によって評価します。

(4)相続税の申告と申告期間

納付すべき税額が算出される相続人または受遺者(遺贈を受けた者)は、相続税の申告書を提出しなければなりません。(相続税法27条5項、施行令7条)。申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内であり(相続税法27条1項)、申告期限までに申告しない場合は、無申告税(原則として納付すべき税額の15%)、重加算税(同40%)が課されることがあります。納期限は、期限内申告にかかる相続税について、当該申告書の提出期限までとなっています(相続税法33条、国税通則法35条2項)。

(5)相続税の延納制度

相続税は、納期限に一括して金銭にて納付することが原則ですが、現実には、それが困難であることもあります。そこで、〔1〕申告・更正または決定による税額が10万円を超えること、〔2〕納期限までに、または納付すべき日に金銭で納付することが困難であること、〔3〕担保を提供すること、〔4〕相続税の納期限または納付すべき日までに所定の「延納申請書」を提出することの要件を満たした上で税務署長の許可を得た場合、延納(年ごとの分割払い)をすることができます。担保として認められているのは、国債・地方債、社債その他の有価証券、土地、建物等で保険に付したもの、保証人の保証等です。

(6)相続税の物納制度

納税は、金銭納付が原則ですが、例外的に物納をすることが認められています。物納が認められる要件は、〔1〕延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること、〔2〕物納申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、下記の財産及び順位で、その所在が日本国内にあること、〔3〕物納にあてることができる財産が管理処分不適格財産に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと、〔4〕物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出することです。

物納に充てられる財産と順位

第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債(特別の法律により法人の発行する債券を含むが、短期社債などは除かれる)、株式(特別の法律により法人の発行する出資証券を含む)、証券投資信託または貸付信託の受益証券
第3順位 動産

管理処分不適切財産

不動産に担保権が設定されているもの、権利の帰属について争いがあるもの、境界が明らかでないもの、借地権の目的となっている土地で当該借地権を有する者が不明であることなど

(7)遺贈によって遺産を取得した場合における相続税

遺言により相続人以外の者が不動産の遺贈を受けた場合、相続税は、相続のみでなく、遺贈により取得した財産に対しても課されます。その際、受遺者が、被相続人の一親等の親族や配偶者以外の方である場合には、原則としてその方が取得した財産に対応して算出された相続税額に2割に相当する金額を加算した額を持って納付すべき相続税額とされます。こうした相続税の負担のほか、受遺者には、不動産取得税、登記関係費用などの負担も考えられるため、場合によっては、受遺者の納税資金などのために金銭贈与も合わせて行うなど、遺贈に当たっては受遺者の負担への配慮が必要となります。

(8)特別縁故者と相続税

相続人となるべきものが明らかでない場合、相続財産管理人の選任がなされ、相続財産の管理・清算、相続人の捜索などが行われます(民法951条以下)。そして、最終的に相続人が存在しないことが確定した場合には、その日から3か月以内に、特別縁故者の請求により、家庭裁判所の審判に基づき、特別縁故者に対して相続財産法人にかかる財産の全部または一部が分与されます(民法958条の3第1項)。財産の分与を受けた特別縁故者は、被相続人から遺贈により財産を取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法4条)。

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